競合も予約ポータルも上にいる検索で、公式サイトは何を見られているのか

東京都・品川エリアの「貸し会議室」は、同業の施設と予約ポータルが自然検索の上位を分け合う市場です。ここで公式サイトがキーワードを足し、一般的な貸し会議室の解説を増やしても、先に投資された面と同じ土俵に並ぶだけで差はつきません。この施設の公式サイトで私たちが選んだのは、逆の方向でした。増やすのをやめ、運営している側にしか書けない情報を洗い出し、検索エンジンと比較検討中の人の両方が辿れる情報構造へ落とし込む。リニューアル、SEO、情報設計、UI/UX、広告、計測、運用まで、同じ判断で通しました。

予約ポータルが上位に並ぶのは、たまたまではありません。あの面は、多数の施設の情報を同じ形式に揃えて集め、検索する人が比べたい順に並べ替えられるようにした場所です。地域名と用途で検索する人が最初に求めるのは「どこにどんな候補があるか」ですから、その要求に対しては、一施設の公式サイトより、候補が並んでいる面のほうが素直に噛み合います。加えて、掲載施設が増えるほど情報も増える構造になっているので、量の面でも公式サイト一本では追いつきません。

だからこの市場では、公式サイトが「候補一覧の下に並ぶもう一枚のページ」になりやすい。そこへ一般的な貸し会議室の解説記事を足していくと、書いてあることの種類がポータルや競合と重なり、後から出した分だけ弱い、という状態が積み上がります。この施設で最初に確かめたのも、何が足りないかではなく、足したところで差がつく余地があるのか、という点でした。

量で勝てないと分かったとき、何を見て「増やさない」と判断したか

市場と競合を調べて分かったのは、競合施設も予約ポータルも、すでに一般的な貸し会議室情報を十分に持っているということでした。収容人数の目安、レイアウトの種類、料金の考え方、選び方のコツ。この種の情報は、どこが書いても内容がほとんど同じになります。同じものを後から足せば、量でも掲載期間でも先行している側に対して、後追いの一枚を増やすだけです。

そこで私たちは、足す方向を止めました。止めたうえで、この施設に残っているものは何かを考えます。答えははっきりしていて、それは情報の出所でした。予約ポータルや比較メディアに載っているのは、各施設から集約された二次情報です。対して公式サイトは、その施設についての一次情報が生まれる場所そのものです。集約する側は、施設が渡していない情報を書くことができません。ここだけは、量や歴史では逆転されない差になります。

この考え方は、検索の評価軸としてはE-E-A-T——経験、専門性、権威性、信頼性——と呼ばれるものに重なります。ただ私たちは、この言葉をそのまま設計の指示にはしませんでした。用語として扱うと「E-E-A-Tを意識したページ」という曖昧な成果物になりやすいからです。かわりに、もっと答えやすい問いに置き換えました。この施設について、公式サイトにしか書けないことは何か。

置き換えてみると、書くべきものが具体的に出てきます。実際に使われてきたからこそ言える、どんな催しに向いていて、どこからは無理があるのか。会場の組み合わせや設備で何ができて、何ができないのか。当日どこまで支えられるのか。運営している主体が誰なのかがはっきりしていること。そして、都合の悪い条件も含めて先に書いてあること。経験、専門性、権威性、信頼性は、この施設の場合、この四つの形で存在していました。

「持っている」と「探せる形にしてある」は、別のことだった

もうひとつ確かめておく必要があったのは、一次情報を持っていることと、それが探せる形になっていることは別だ、ということです。運営していれば情報は手元にあります。しかし手元にあるだけでは、検索する人にも検索エンジンにも届きません。届く形にするというのが、この案件における情報設計の中身でした。

運営していれば、現場の実際は自然に手元へ集まります。どんな使い方に向いていて、どこからは無理があるのか。設備や条件で何ができて、何ができないのか。当日どこまで支えられるのか。ただ、こうした一次情報は、運営している側にとって当たり前であるほど、書かれないまま残ります。当たり前は説明されないからです。ですから最初に行ったのは、その当たり前を外に出し、検討している人が自分の条件と突き合わせられる言葉にしていく作業でした。

あわせて決めたのが、一ページに全部を載せないということです。研修で使う人、発表の場として使う人、懇親の場として使う人では、確かめたいことがそもそも違います。全部を一枚に積み上げると、情報は揃っているのに自分に必要なものが見つからない状態になる。ですから、確かめたいことの単位ごとに受け皿となるページを持たせ、そこに一次情報を置きました。この整理は、比較検討している人の探しやすさと、検索の入口を増やすことの、両方に同時に効きます。二つの目的のために二種類の作業をしたわけではありません。同じ一つの情報設計から出てきています。

書き方の方針も決めました。できること、できないこと、条件を、先に書く。どんな用途にも対応できると大きく見せるほうが、一見すると強く見えます。しかし会場を探している人は、当日を任せる相手を選んでいます。線引きが書かれていないほうが、かえって不安に見える。向いている使い方と、そうでない使い方をはっきりさせることが、この領域では信頼の材料になります。

最後に、増え続ける情報の置き場所を用意しました。どんな催しに使われたかという実績は、これから借りる人にとって最も具体的な判断材料になります。ただし、一度書いて終わりの読み物ではありません。運営していれば実績は増えます。増えた分を同じ粒度で足していける形にしておくことが、公式サイトを一次情報の置き場であり続けさせる条件でした。

リニューアルを起点にして、広告・計測・運用まで同じ判断で通した

ここまでの判断は、サイトを作り直すときにだけ効くものではありません。公開した時点が完成ではないからです。私たちはリニューアルを担当しましたが、同じ判断を、広告にも、計測にも、その後の運用にも通しました。

広告では、公式サイトで定めた「何で選ばれる施設なのか」をそのまま訴求に使っています。サイトと広告で言っていることがずれると、クリックした人が着地したページで話の前提を組み直すことになり、せっかくの接点が薄れます。逆に揃っていれば、広告は公式サイトの一次情報へ人を運ぶ経路として働きます。

計測では、公式サイトが自力で連れてこられる人、つまり自然検索からの流入を、前年の同じ月と並べて見る軸を置きました。広告を含めた全体の数字だけを見ていると、公式サイト自身がどう評価されているのかが見えなくなるからです。ここで注意しているのは、情報設計を変えたから流入が動いた、と言い切らないことです。同じ時期には広告も動いていますし、市場も一定ではありません。それでも、自分たちが手を入れた面が、どの指標でどう動いているのかを、推測ではなく記録として持てるようにしました。

そして運用です。一次情報は運営している限り増え続けます。増えたときに誰が触っても粒度が崩れない形を先に決めておくことが、公開後にじわじわ効いてきます。E-E-A-Tを一度の制作物として作り込むのではなく、更新のたびに厚くなっていく蓄積として設計する。この案件でいちばん時間をかけたのは、その形を決めるところでした。

自社サイトにしか書けないことは、何か

もし自社の検索結果で、同業とポータルや比較メディアが上位を分け合っているなら、まずその画面を一度そのまま見てみてください。上にいるのが誰で、それぞれ何の役割を果たしている面なのか。そこが見えると、自社が足すべきものが「同じ種類の情報のもう一枚」ではないことが分かります。

そのうえで、書けることの棚卸しをおすすめします。自社が実際にやってきたから言えること、判断できること、できないこと、条件。この四つは、外部の集約サイトには書けません。用語としてのE-E-A-Tを追いかけるより、この棚卸しのほうが、次に何を書くかが決まります。そして棚卸しの結果を、検索する人が確かめたい単位に割り付け直す。順番はこれで足ります。

ここでお話しした考え方は、貸し会議室に限らず、外部のポータルや比較メディアが検索の上位を占めている事業であれば、そのまま応用できます。自社サイトで何から手をつけるべきか迷われたときは、気軽にご相談ください。