「地域名 × 不動産」という検索の、正体
「広島 不動産」という検索を、ただの集客キーワードだと思うと、本質を見誤ります。これは、生活の節目に立った人が、「この土地で、どの会社になら任せられるだろうか」と一緒に確かめている検索です。頭の中にあるのは、物件の条件だけではありません。損をしたくない、囲い込まれたくない、いいことばかり言う相手に急かされたくない——そういう警戒が、最初からそこにあります。
この気持ちが、市場の構造とすれ違います。検索結果の上から、広告、地図(Googleビジネスプロフィール)、そして無数の物件を掲載数と手数料で並べた大手ポータルや比較・ランキングサイトが場所を占め、一社分の考え方で向き合う公式サイトは、下へ押し下げられやすい。しかも公式サイトは、同じ土俵で物件数や掲載量を競っても勝ちにくく、「どこが多いか、どこが安いか」という比較の文脈に流し込まれてしまいます。
つまり「広島 不動産」で見つけてもらえない難しさは、サイトの出来不出来だけの問題ではありません。検索市場そのものの構造から来ています。そして、初めての土地で失敗したくない人にとって本当に必要なのは、物件が最も多い会社の一覧ではないはずです。
では、公式サイトには何ができるのか
答えは、ポータルと同じ戦い方をやめることです。
ポータルは、物件を条件と価格で「並べて選ばせる場所」です。たくさんの選択肢を上から見比べるための、入口だと言ってもいい。それ自体はとても便利です。けれど、生活の節目に立った人が最後に欲しいのは、物件の一覧そのものではありません。「この会社になら、急かされず、正直に相談できそうだ」と思える、たった一社です。ポータルが入口だとすれば、公式サイトは、その先で腰を据えて意思決定をする場所です。役割がそもそも違う。だから公式サイトが整えるべきなのは、物件数でも掲載量でもなく、相談をためらう人の警戒が解けていく順番です。
初めての土地や大きな決断を前にした人が確かめたいことには、だいたい決まった順番があります。「この会社は、この地域のことを分かっているのか」「相談したら、囲い込まれたり急かされたりしないか」「都合の悪いことも、正直に言ってくれるのか」「相談は、どう進むのか」、そして最後に「この会社に、問い合わせてみよう」。この警戒が解けていく順番に、ページの言葉と導線が沿っていれば、訪れた人は身構えずに一歩を踏み出せます。物件数で勝つのではなく、「ここになら相談していい」と問い合わせる前に感じてもらえること——それが、公式サイトの勝ち筋です。
この案件で、何を・どの順で考えたか
広島のある不動産会社をご支援したとき、私たちが最初に決めたのは、設計するのは物件の見せ方ではなく、相談をためらう人の心理だ、ということでした。
この領域で人がまっ先に越えられずにいるのは、物件情報の少なさではありません。「どの会社も同じに見えて、どこに相談していいのか分からない」という、選ぶ手前での立ち止まりです。そこがほどけないかぎり、どれだけ物件をきれいに並べたページも、比較の一枚として流し見されて閉じられてしまう。だから私たちは、物件一覧をどう見せるかから考えるのをやめ、「なぜこの会社に相談していいのか」という理由を先に伝えることを、設計の起点に置きました。
考え方の芯は、四つあります。ひとつ、物件数では勝負しない。量で並べれば、ポータルと同じ土俵に戻ってしまうからです。ふたつ、比較ではなく、相談する理由をつくる。他社と見比べさせるのではなく、この会社の考え方や地域への向き合い方が伝わる言葉を先に置く。みっつ、ポータルはあくまで入口だと捉える。入口を否定するのではなく、その先で腰を据えて相談できる場所を用意する。よっつ、公式サイトは、物件を探す場所ではなく、意思決定をする場所として設計する。
そのうえで大切にしたのが、二つの姿勢を飾らずに前へ出すことです。ひとつは、囲い込まない・急かさないということ。もうひとつは、都合の悪いことや、できること・できないことも、正直に説明するということ。この二つは「無理に勧めません」という引き算の約束にとどまらず、「決めるのは、あなたです」と判断をお返しする姿勢として、言葉にしました。あわせて、この地域を分かっていること、相談がどう進むのかを、迷いの解ける順番で並べています。派手な訴求は足していません。この領域では、いいことばかりの言葉は、そのまま不信に変わるからです。検索でどう見えるかではなく、「この会社になら相談していい」と感じてもらえる順番に言葉と構造を合わせること——その一点を、最後まで設計の中心に置きました。
持ち帰っていただきたいこと
もし、自社の公式サイトが大手ポータルの陰に隠れていると感じるなら、原因は見た目やデザインではなく、相談をためらっている人の気持ちと、サイトの言葉の順番のずれにあるかもしれません。まず一度、自社が「地域名 × 不動産」でどう見えているか、そして問い合わせの前に何を確かめたい人が来ているかを、思い描いてみてください。それだけでも、次に整えるべき場所が見えてきます。
このページでお話しした考え方——検索する人を「問い合わせ件数」ではなく、「生活の節目に立って、任せられる一社を探している人」として読み、ポータルを入口、公式サイトを意思決定の場所として役割を分け、警戒が解けていく順番で言葉を設計する——は、不動産に限らず、決めるまでに慎重さがいるサービスに、そのまま応用できます。
どこから手をつけるか迷われたら、そのときは気軽にご相談ください。